入院第4日−入院第11日 [2013年5月20日(月)−5月27日(月)]

■入院第4日(5月20日)−入院第6日(5月22日)

入院第4日、つまり手術の翌々日くらいから何とかベッドの背を起こすことで身体を起こせるようになり、食事も自力でするようになりました。しかし前腕から皮弁を採取した左腕はギブスで固められていて、使いにくいことこの上ありません。左手がギプスで固められているので、点滴は右腕です。大変不自由です。
それでも食事はしなければならないので、限られた自由を何とかやりくりしてナイフだのフォークだのを使います。粥のような流動食だけでなく固形物も食べられるようになってきたのもこの頃。

 

手術が終わると或る医療用器具を用いて呼吸器の回復訓練を行います。 トライボールという名前らしいですが、タイ滞在中はその名前は知りませんでした。

青いホースの一端を口にくわえ、思い切り吸います。吸うと透明な筐体の中のボールが浮かんできます。ボールは色が薄い方から濃い方へと重くなっています。ボールが三つとも浮かぶように吸うことができるようになればいいね、という器具です。
1日数回、これを吸って呼吸器の訓練をします。簡単そうに見えますが、術後の呼吸器の衰えというのは想像以上で、術後はじめてこれを吸ったときに筐体の一番上まで浮かんだのは一番色の薄いボールだけで、2番めのボールは途中までしか上がらず、一番濃い色のボールは少しも動きませんでした。これもNさんが気を付けてときどき吸うように差し出してくれます。

 

食事は予めのメニューではなく、ほとんどNさんがオーダーしてくれたものを食べていました。朝は目玉焼きとソーセージ、昼と夕は鶏照り焼きとえびチャーハン、クラブハウスサンドなどを順繰りに。身体が元気であれば大抵のものは食べるのですが、予想以上に私の身体は弱っていて、日本で食べるものに近い味のものしか受け付けてくれませんでした。
ギプスが付いている間も外した後も左腕は使いづらく、手を握って拳骨をつくることもできません。しかし、使わなければ回復しません。自分の腕なのに思うように動かないのはじれったくもありますが、怖くもありました。このままずっと動かないのではないかと。
じれったいながらも動かすように気をつけていれば少しずつ回復していきます。私の場合は帰国までに軽くものを掴めるくらいに回復しました。術後半年もすればだいたい不自由なく動かせるようになります。大切なのはきちんとリハビリテーションすることです。

 

点滴やカテーテルが身体につながっているのでベッドから降りることはできません。一日中ベッドの上でじっとしていることになります。大変退屈です。私はDVDを数枚持参していたのでT社からプレイヤを借りて病室でもそれ等を見ることができました。しかし、1枚のDVDを一日中見る訳にもいかないので、プレイヤの中のDVDを誰かに入れ替えて貰わなければなりません。Nさんがいる日中はNさんがその役目をしてくれました。それ以外の時間もナースにお願いすればして貰えるのですが、何だか頼みづらく思えて、私はお願いはしませんでした。
外国にあって、日本語が聞こえる環境というのは、大切なものだと思いました。病院のTVはNHKの国際放送も映るのですが、大部分が英語ニュースなのであまり愉しくありません。

 

食事ができるようになれば、排泄もしなければならなくなります。排尿は尿道カテーテルを通して尿バッグに勝手に流れていきますし、尿バッグの中身はナースが気を付けて定期的に捨ててくれます。排便は、カテーテルや点滴がつながっているのでトイレに行くことができません。
では、どうするか。
ベッドの上でします。仰臥位用の便器というものがあって、これをナースに尻の下にセットして貰います。

米国式の差し込み便器です。セットして、ナースは退室してくれます。終わったらナースコールでナースを呼んで後始末をして貰います。便器を外して尻をきれいに拭い、排出したものは処分してくれます。慣れないうちはなかなか排便しづらいですが、排出できないと大変なことになりますからそうも言っていられなくなります。「習うより慣れろ」です。

 

■入院第7日(5月23日)−入院第11日(5月27日)

入院7日め、手術の日から5日めに左前腕部のギプスの交換が行われます。朝食が終わって暫くして回診がはじまります。回診時に執刀医が診て、大丈夫と判断されれば処置が行われます。
ギプスは昔みたいな固くて重い石膏ではないので割りと簡単に外れます。ギプスが外れた腕には包帯が巻かれていて、それを一旦外して腕を水洗いして水気を拭って再度ガーゼや包帯を当てて、またギプスを着けます。
日本の病院と違って、処置の際にナースは大勢やってきます。そして大勢で準備をして、大勢で処置をして、ぞろぞろと去っていきます。処置中の会話はありません。もしかしたら、私には言葉が通じないだろうからと話さないのかもしれませんが。

 

入院第9日めには、T社の「日程ご案内書」によると腹部・鼠蹊部の抜糸をすることになっていましたが、それはこの日には行われませんでした。後日行われます。

 

その他の日というのは、だいたいこんな感じです。
朝6時くらいにナースが検温にやってきます。腋の下に挟む体温計ではなく、赤外線を身体に照射して計る機械を使います。額で体温を、患部で炎症を起こしていないかの確認(炎症を起こすとその部分の温度が高くなる)をします。


7時半頃、掃除担当者がやってきて、部屋とシャワー・トイレの掃除をして備え付け冷蔵庫のミネラルウォーターを補充してくれます。ミネラルウォーターは無料で飲むことができます。


8時少し前に朝食が運ばれてきます。食べている途中か食べ終わった頃にドクターナースが来て診てくれます。
食事を終えて暫くした頃、ナースが二人組でやってきます。清拭とシーツ交換です。ベッドに寝たきりの身体を上手に動かして全身を拭ってくれ、仕上げにはパウダーを付けてくれます。身体を拭いている間に歯磨きもします。歯磨き粉を付けた歯ブラシを手渡してくれるので、それで磨きます。終わると水が入ったコップを渡してくれるので、それですすぎます。ベースンを用意してくれるので汚れた水はそこに吐き出します。清拭とシーツ交換は頼まなくても毎日してくれます。


午前9時〜10時くらいの間に執刀医の回診があります。患部を毎日診てくれます。
私の場合ですが、この後精神科の回診もあります。気分はどうか、不安はないか、など訊ねてくれます。精神科の回診には精神科専属の通訳さんが付いてきてくれます。


昼前にはT社のNさんが来てくれます。昼食・夕食のオーダーを出してくれたり、飲み水を用意してくれたり、DVDを再生してくれたり……といろいろ世話をしてくれます。


12時少し前に昼食が届きます。タイ米のごはんと鶏や魚等の主菜、サラダ等の副菜、ジュース2種、という組み立てです。
昼食を終えてから夕食までは特に行事はありません。できるだけ水を飲んだり、トライボールを使ったりしつつ、DVDを見て過ごします。私が持参したのは「のだめカンタービレ」全11話と 「創聖のアクエリオン」全26話、映画「めがね」、「トイレット」、「銀河鉄道の夜」、「るろうに剣心」。


午後5時過ぎにNさんが帰ります。午後6時頃に夕食。Nさんが帰った後は同じDVDを繰り返し見ます。内容はすっかり憶えてしまっていますが、英語やタイ語の判りづらいテレビ番組を見るより日本語のDVDを見ている方が(私は)落ち着きます。
ナースにお願いしてDVDの入れ替えをして貰ってもいいのですが、渡航前からうつ状態が続いているので、あまり誰かに話しかけたりはできずにいるのです。DVDプレイヤとTVのリモコンは手許に置いて貰っているので電源のオンオフやDVD再生停止などは自分でできます。


午後9時頃、消灯。 TVも消します。眠前の薬が運ばれてくるのでそれを服んで安静にします。巧く行けば小一時間のうちに入眠できます。
各食事の後にも薬が運ばれてきます。薬の管理はナースがしていて、1回分ずつ服ませに来てくれるのです。


入院中の毎日は、だいたいこんな風に過ぎていきます。

 

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