左前腕と右臀部

2013年の渡航で手術を受けたのは外陰部と左前腕、右臀部です。左前腕から皮弁を採って陰茎とその中の尿道を形成し、その根もとに陰核が来るように移植します。陰茎にはシリコンの芯が入ります。また外陰部を形成して陰嚢をつくります(睾丸はありません)。
左前腕の皮弁の跡には右臀部から採取した皮膚を移植します。臀部の皮膚は切り取るのではなく、薄く剥がして使用します。このことで傷はできるものの、臀部から皮膚がなくなることはありません。
このように、今回の手術では外陰部、左前腕、右臀部に大きな傷ができました。

 

■外陰部

手術から2〜3箇月程度は、外陰部の洗浄と消毒が必要になります。生理食塩水(または精製水)を含ませた脱脂綿等で外陰部全体を拭いて汚れを取り、縫合痕をヤンヒー病院で貰った薬液をつけた綿棒で消毒します。自宅近隣に外科の病院があれば、そこで診て貰うのもいいでしょう。私は帰国後にヤンヒー病院で貰った薬がなくなると近所の外科で受診し、ゲンタシン軟膏を貰って縫合痕に塗っていました。

入浴許可が出るまでは入浴できませんが、許可が出た後は入浴後に消毒・薬を塗布するといいでしょう。
患部の写真も掲載できればいいのですが、ここでは控えておきます。

 

■左前腕部

皮弁を切り取った後の傷は、私の場合はほかの傷よりも治癒が遅かったです。親指側の縫合痕が長い時間塞がらず、自宅近所の外科で診て貰うことになりました。
入浴許可が出たらヤンヒー病院でつけて貰っていたガーゼやサポーターは外してもいいものと思い、そのようにしたら、親指側の縫合痕がまだ塞がっていませんでした。その時点で病院へ行けばよかったのですが、帰国後も長いこと持病のうつがつらく、適切な判断ができずに傷を暫く放置してしまいました。

 

塞がっていない部分にはごつごつと大きなかさぶたができました。これが自然に取れてしまえば治癒するだろうと思っていましたが、創傷治療について調べてみると、「かさぶたが取れたら」というのは数十年前の治療方法で、現在では「湿潤療法」と言って傷を乾かさない、かさぶたをつくらない治療方法が基本となっているということが判りました。そこでようやく私は受診する気になって病院へ行ったのでした。
病院で先ず医師がしたことは、できてしまったかさぶたをすべて除去することでした。 20〜30分かかってかさぶたを取り去った部分に薬を盛り(「塗る」と言うより「盛る」感じでした)、ガーゼを被せ、ネットで覆っておきます。こうやって2〜3日置きに受診して医師に処置して貰い、傷が全部塞がるまで約1箇月(術後3箇月くらいまで)かかりました。

上の写真は傷が塞がってから3週間後の様子です。
痕がひどいというので外科の医師がヒルドイドという軟膏を処方してくれました。

これを傷跡に塗り、防水フィルムで覆っておきなさいと指示がありました。やはり保湿のため(乾かさないように)そうするのだそうです。そうすれば傷痕が薄くなっていくとのことです。

これは術後約1年の写真。赤みがだいぶ引いて目立ちにくくなりました。ヒルドイドを用いての湿潤療法を半年ほどさぼってこの程度の治癒です。きちんとしていたらもう少しきれいになっていたかもしれません。
とはいえ、この傷痕は一生消えずに残ります。見る人が見れば「性別適合手術を受けたFTMである」と判る証拠品のようなものです。前腕皮弁を用いた手術をするということは、この傷痕とともに生きていくということです。手術を受けるには充分な覚悟が必要でしょう。

 

手術直後は可動範囲が狭く、握力も弱っていた左腕ですが、術後1.5箇月ほどで頬杖をつけるくらいに可動域が広がり、ペットボトルを開栓できるまでに握力も回復しました。1年もすれば10kg程度のダンベルを挙上できるようになります。日頃から動かしてリハビリテーションすることが大事です。

 

■右臀部

臀部からは左前腕の傷を塞ぐための皮膚を採取します。切り取ってしまうのではなく、ピーリングと言って薄く剥がして採取するのです。採取後の臀部は薬を塗ってガーゼで覆われていて、ガーゼが自然に剥がれ落ちるまでそっとしておくように指示があります。
私の場合は、バンコク滞在中にガーゼが外れてしまい、乾いてかゆみが出たのでベビーオイルを塗っていました。傷は概ね治癒したものと思っていました。

 

しかし、帰国してからが大変でした。長時間の座位姿勢を毎日続けていたせいか、右臀部の床に接する部分に水疱ができ、痛み出しました。水疱を破って内容液を出し、ガーゼで覆って治癒を待ちましたが、これも数十年前の治療方法です。現在では防水シートで保護する湿潤療法が基本となっています。それを知った私は薬局でキズパワーパッドを買い求め、これで傷を保護しました。
しかし、たびたび水疱が破れ、滲出液が沢山出てキズパワーパッドでは追いつかず、下着やズボンを汚すようになったので、左前腕と一緒に外科で診て貰うことにしました。

 

滲出液を拭い、患部を消毒して湿らせたガーゼで覆い、その上に防水シートで覆って保湿します。防水シートで覆っているので滲出液で下着などを濡らす心配もしなくていいし、シャワー程度の入浴もできます。滲出液が多すぎて防水フィルムが剥がれてしまい、慌てて病院に駆け込むことも何度かありましたが、2〜3日に1回の処置を受診のたびにして貰い、約2箇月(術後4箇月めくらいまで)かかって治癒しました。

写真は左前腕部移植用皮膚を採取した痕(右臀部)です。術後約1年。これも左前腕部と同様、術後直ぐよりもかなり赤みが引いた状態です。公衆浴場などに行くと多少人目が気になるかもしれません。ケロイド状の傷痕にはよくあるらしいですが、この部分は割りと頻繁に強いかゆみが出ます。乾燥しやすいからかもしれません。ベビーオイルやローションを塗ってのケアが必要でしょう。
また、ヒルドイドを塗っての湿潤療法を行えば左前腕部同様、この傷痕も幾らか薄くなるのかもしれませんが(写真の傷痕はこれ等のケアを一切せずに1年が経過したものです)、 これもおそらく一生ものの傷痕です。

 

Copyright © 2013- office es All Rights Reserved.

<< もどる  と じ る  つぎへ >>